相続 | 大分県大分市 司法書士 麻生司法書士事務所
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相続登記

相続登記の義務化

令和6年4月1日から不動産を所有していた人(以下、所有者)がなく亡くなった場合に、不動産を配偶者や子、親もしくは、兄弟に名義変更(以下、相続登記)する手続きが義務化されました。

 

なぜ相続登記が義務となったのか

所有者が亡くなったのに相続登記がされないことによって、不動産の登記記録を見ても所有者が分からない「所有者不明土地」が全国で増加した結果、周辺の環境悪化や民間の不動産取引・公共事業の阻害が生ずるなど、近年社会問題となっています。
この問題を解決するため、これまで任意だった相続登記が義務化されることになりました。
一説によると、所有者不明土地の面積は九州全土の面積を上回るそうです。

 

罰則

正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処することとする。とされています。
その法的な性質は、行政上の秩序罰にあたり、いわゆる前科がつくわけではありません。
正当な理由とは

  1. 相続登記の義務に係る相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
  2. 相続登記の義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
  3. 相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
  4. 相続登記の義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
  5. 相続登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合
  6. 上記の何れかにも該当しない場合においても、個別の事案における具体的な事情に応じ、登記をしないことについて理由があり、その理由に正当性が認められる場合には、「正当な理由」があると認められます。

 

対象者及び期限

遺言がない場合

相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内。

 

遺言がある場合

遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者、または遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(特定財産承継遺言)で所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内。

遺贈は相続人ではない第三者にもすることが可能であるため、第三者である場合は義務とはなりません。

 

遺産分割が成立した場合

相続の開始後に遺産の分割があったときには、当該遺産の分割によって所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から3年以内。

 

遺産分割が成立した場合の注意点
  1. 法定相続分での相続登記がされた後に遺産分割が成立した場合の追加的申請義務
  2. 法定相続分での相続登記(所有権の移転の登記)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって法定相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から3年以内。

     

  3. 相続人申告登記の申出後に遺産分割が成立した場合の追加的申請義務
  4. 相続人申告登記の申出をしたその後の遺産の分割によって所有権を取得したとき者は、当該遺産の分割の日から3年以内。

 

例外

代位による申請や官公署の嘱託により登記がされた場合の申請義務は免れる

 

令和6年4月1日時点で既に相続が発生している場合

経過措置として、令和6年4月1日から3年以内に行わなくてはなりません。

 

相続登記における必要書類

遺言がない場合

  1. 亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍謄本一式
  2. 相続人の戸籍謄本
  3. 不動産を取得される方の住民票の写し
  4. 亡くなられた方の除票
  5. 亡くなられた方が所有していた不動産の評価証明書
  6. 遺産分割協議を行った場合には相続人全員分の印鑑証明書

戸籍謄本等の取得について

令和6年3月1日より戸籍の広域交付制度が始まりましたので、以前より集め易くなりました。
具体的には、戸籍証明書等を最寄りの市区町村の窓口でも取得出来るようになりました。さらに、一か所の市区町村の窓口でまとめて請求出来ます。
取得についてのポイントは以下のとおりです。

  • 戸籍証明書等を請求できる方が、市区町村の戸籍担当窓口にお越しになって請求する必要があります(郵送や代理人による請求はできません)。
  • 窓口にお越しになった方の顔写真付きの身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)の提示が必要です。
  • コンピュータ化されていない戸籍証明書は請求できません
  • 取得可能な戸籍証明書等範囲は、本人、配偶者、父母、祖父母、子、孫が載ったものとなります(兄弟は対象となりません)。

 

遺言がある場合

  1. 遺言書
  2. 亡くなられた方の戸籍謄本
  3. 相続人の戸籍謄本
  4. 不動産を取得される方の住民票の写し
  5. 亡くなられた方の除票
  6. 亡くなられた方が所有していた不動産の評価証明書

 

相続人申告登記の申出

登記申請に当たっての手続的な負担が大きいため、相続人が申請義務を簡易に履行することができるようにする制度

 

法定相続人の範囲及び法定相続分の割合の確定が必要であるため、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸除籍謄本等の書類の収集が負担となるために簡易的な手続を用意したとされてますが、実務上は拡大解釈して行われるかと思われます。

 

具体的な手続について記載します。

申告の内容

不動産の名義人について相続が開始した旨と、自らがその相続人である旨を申告する

 

申告の期間

相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内。

 

対象となる者

相続人全員が義務となります。単独で申告できるのですが、その場合はその者のみ義務を果たしたことになります。ただ、委任を受けてまとめて申告することも可能です。

 

必要書類

  • 戸籍謄本
  • 住民票

戸籍謄本については、申出をする相続人自身がが被相続人(所有権の登記名義人)の相続人であることが分かる当該相続人のもので足りる

 

申告する場所

亡くなった方が所有していた不動産を管轄している法務局

 

相続放棄

亡くなられた方に借金がある場合、疎遠になっていて関わりたくない場合など、相続する権利を放棄することができる制度です。
なお、特定の財産のみを放棄することは出来ず、全ての財産を放棄することになります。
以下に相続放棄の手順を記載します。

 

  1. 自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3か月以内に亡くなられた方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。
  2. 申請書に必要事項を記載の上、収入印紙800円を貼付し、管轄裁判所指定の切手を同封の上、送付します。
  3. その後、家庭裁判所から確認の郵便が届きますので、必要事項に記載の上、返信すると問題がなければ相続放棄申述受理通知書が届きますので、通知書を保管してください。

3か月以上経過していても認められるケースがありますので、ご相談ください。

 

用語解説

自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日とは

相続の開始があったことを知るとは、客観的に判断されます。
つまり相続人が実際に知らなくても、客観的に知ることができるような状況であれば、相続の開始日(亡くなった日)となります。
以下、認識した日についてずれを主張できるかどうかを例を上げてご説明します。

 

認められない場合
  1. 長期の旅行中であったため、知ることが遅れた場合
  2. 法律を知らなかった場合

 

認められる場合
  1. 先順位の相続人が相続放棄を行ったことにより、相続人になった場合
  2. 亡くなった方と絶縁状態である場合
  3. 不動産の所在が遠方等の理由で、相続人が所有権を取得したとの認識が困難な場合

 

費用

費用は大きく分けて司法書士報酬と登録免許税に分かれます。

登録免許税 評価額×0.4%

相続人申告登記の申出の場合の登録免許税は非課税です。