株主総会は、株主によって構成され、株主の決議によって意思決定を行う株式会社における最高の機関です(会社法第295条1項)。
株主総会は、年に一回必ず行う定時株主総会と、必要に応じて開催される臨時株主総会があります(会社法第296条)。
株主総会の招集は、取締役(取締役が2名以上である場合には、その過半数の一致、取締役会設置会社においては取締役会の決議)によってその日時や場所、議題等が決定され、その決定に基づいて取締役が招集することとされています(会社法298条・296条第3項)。
また、例外的に一定数の議決権を有する株主や裁判所の許可を得た株主も招集することができます(会社法297第1項・4項)。
さて、今回のポイントである株主総会の開催地につていです。
上記で触れた株主総会の招集において株主総会を開催する場所を決める必要があるのですが、株主が出席可能な場所で開催されることが望まれています。そのため、一定の規制があります。(会社法施行規則第63条第1項第1号)
よって、出席が困難な場所を指定した場合には、株主総会決議の取消事由になります(会社法831条1項1号)。
ただし、出席が困難な場所を指定しなくとも、そもそも海外に居住している等、物理的な出席が困難な株主も存在するでしょう。
そのため、コロナ禍あたりから注目を集めることになった、物理的な場所を設けつつ、インターネット等で参加できるハイブリット型バーチャル株主総会の出番となります。
また、物理的な場所を設けないバーチャルオンリー型の株主総会もあるのですが、かなり限定的な制度で一般的には行わないかと思いますので、今回コラムでは扱いません。
条文で明確化されていないので、運用にあたり一定の注意点が必要になります。
同意書を用意する等、状況によっては対策をとっていたほうが良いでしょう。肖像権のからみもありますので、録画は避けたほうが無難ですが、どうしても録画が必要であれば出席者全員の同意を得るべきでしょう。
その他、セキュリティ面、本人確認、アクセス障害時の対応等、事前に注意すべき事は多いです。
また、招集にあたっては当然ながらWebサイトのアドレスやパスワード等、招集の決定事項に含む必要があります。
今回ご紹介するハイブリット型バーチャル株主総会には、以下の通り、参加型と出席型に分けることが出来ます。
これは、単に株主総会のWeb等の配信される中継動画を傍聴するものになるので、株主総会に出席したことにはなりませんので、議決権行使、質問(会社法第314条)、動議(会社法第304条)を行うことはできません。
このうち、議決権行使については、後述する出席した代理人による行使または、事前に定めれらた方法による書面もしくは電磁的方法による行使となります。
参加型とは異なり、実際に株主総会に出席したものとして扱われます。そのため、議決権の行使は、後述する書面や電磁的方法による決議ではなく実際に出席した株主の決議と同様に扱われます。
本ページの一部は、経済産業省のホームページを参考に作成しましたので、詳細を知りたい方はリンク先をご覧ください。
株主総会に出席した株主は、議題毎に議決権を行使することになりますが、欠席した場合には代理人による決議、書面による決議(会社法298条第1項3号)又は、電磁的方法による決議(会社法298条第1項第4号)による方法もあります。
代理人による議決権を行使は、代理権を証明する書面(委任状)を会社に提出する必要があります(会社法310条第1項)。
書面又は、電磁的方法による議決権の行使は、取締役は株主に対し招集通知に際して法務省令で定めるところにより議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(「株主総会参考書類」)及び株主が議決権を行使するための書面(「議決権行使書面」)を交付しなければならないとされています(会社法301条)。
ハイブリット参加型バーチャル定時株主総会を行った会社の議事録を作成し、登記を申請しましたが、補正にかかることもなく無事に完了しました。添付書類は通常通りでしたが、念のため該当する1名の同意書を保管用として、作成しました。
議事録には以下の内容を通常の議事録に加えて記載しました。
赤いマーカーを引いている箇所が追加で記載した分
以下、一部抜粋しています。
令和〇年〇月〇日午前10時00分から、当会社本店において、第1回定時株主総会を開催した。
なお、事前に申し込みがあった株主1名については、当社所定のインターネットシステム(以下、「本システム」という。)を通じて本定時総会に出席した。
出席取締役
代表取締役 〇〇〇
取締役 ▲▲▲(本システムを通じて本定時総会に出席した。)
以上のとおり株主の出席があったので、定款の定めにより代表取締役〇〇〇は議長席につき、本定時総会は適法に成立したので、開会する旨を宣し、直ちに議事に入った。
あわせて、本システムにより出席した株主および役員については、議場と即時に的確な意見表明が互いにできる状態であることを確認した。
議長は、本システムが終始異常なく、以上をもって本日の議事を終了した旨を述べ、午前11時00分閉会を宣した。
上記決議を明確にするため、本議事録を作成し、議長及び出席取締役(本システムを通じて本定時総会に出席した者を除く)が次に記名押印する。